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タイトルなし

それは、とある日の何でもない会話だった。
「で、とってもいいのよ!やっぱりいるのといないのとじゃ天と地の差!!」
わたしは紅茶を一口含んでから、少し声をひそめる。
「でも結構高かったでしょ?最新式?」
「それがね、型落ちしてても必要な機能だけならそんなにしないのよ。あなたも一回見に行ってみなさいな」
午下り、お茶仲間のミナとの何気ないおしゃべり。
今日はそれが、オートマタの話題だった。
「わたしお皿洗うの嫌いだし、食洗機くらいあってもいいかなーって思って主人に相談したらまさか『オートマタもいいみたいだぞ』なんて言われると思ってなかったの。当たり前よね?家事全般任せられるメイドを置いてもいいっていうことだもの。あの人もきっとどこかで話を聞いたに違いないわ」
「で、結局皿洗いだけじゃなくて掃除洗濯料理まで?」
続けた質問に、ミナは満面の笑顔で首を振る。
「話し相手にもなってくれるの!あんまり難しいことは言えないんだけど、そりゃあオートマタだからわたしの気に障るようなことは言わないし……なんだか家族が増えたみたい」
家族。少しどきりとした。
機嫌の良いミナのお喋りはまだ止まらないが、そのフレーズが耳に残った。
紅茶とキューカンバサンドイッチを食べ終えた頃にはお日さまが15度傾いていた。
「ああベス、今日はわたしばっかり話してごめんなさいね。次はあなたの話も必ず聞くから!」
気にしないで、とわたしが告げるのも聞いたかどうか怪しいタイミングで彼女は足早に大通りへ駆けていった。
確か今日は第三の礼拝日だから、旦那さんの家族が夕餉を食べに来る予定だ。結婚してるといろいろ大変ね、とわたしは他人事ながら思い、店を出る。
わたしにはこの後の予定など何もない。いや、仕事を進めようと思えばできるのだけれど、なんとなく気分が乗らなかった。
……確かに一人暮らしはさみしいから、猫でも飼おうかな、なんて思ってはいた。そして、まさかそれをオートマタにしてみようかなんて思うわたしがいたことに驚いた。






ふっと浮かんだので消えないうちにメモがわり。

by unfairy-tale | 2017-08-20 21:52 | 創作物(らくがき) | Comments(0)
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